なぜ行政書士なのか——三つの位置から制度を見て

代表紹介事務所の考え方

Ville行政書士事務所の代表、村上聡です。
事務所案内のページに「やっているのは交通整理です」と書きました。専門家それぞれの意見は正しいのに、経営者の側から見ると結局どうすればよいのかが決まらない——その場面を、私は何度も見てきました。
なぜ交通整理を自分の仕事だと考えるようになったのか。行政の窓口、士業事務所、そして自分で会社を経営するという、性質の違う三つの現場を順に歩いてきたことが理由です。少し長くなりますが、その道のりを書きます。

申請を「受ける側」にいた12年

はじめの12年は、市役所の職員でした。統計、港湾管理、税務、用地補償、漁港。担当は何度も変わりましたが、どの部署でも見ていたのは、申請を受ける側の景色です。

書類が整っていても許可できない場合があり、逆に足りなくても、事情を聞けば道が見つかる場合がある。窓口が何を見ているかは、外からは見えにくいものだと思います。

窓口の担当者は、目の前の書類だけを見ているわけではありません。この申請を通したとき、後で問題が起きないか。前例と違う扱いをするなら、その理由を説明できるか。そこを気にしています。ですから、要件を満たしていることを示すだけでなく、担当者が判断を通しやすい形に資料を整えることには意味があります。

東日本大震災のあとは、がれき撤去の現場監督を担当しました。重機が動く現場に立ち、建設業に携わる方々と日々やり取りをしました。工程が読めない、人も機械も足りない、それでも進めなければならない——そういう現場です。

書類の上だけで要件を当てはめるのと、現場を知っているのとでは、見えているものが違います。いま建設業許可を扱ううえでの土台になっています。

税の原点は、徴税と滞納処分だった

税務課では、徴税と滞納処分を担当しました。市税だけでなく国税・県税、その他の公課まで、制度とその立法趣旨を横断的に把握する必要がある仕事です。課税を担当する部署よりも広く税を理解していなければ務まりません。私の税に関する知識は、ここが原点です。

同じ窓口では、確定申告のご相談も受けていました。納めていただく立場と、相談に乗る立場の両方に立った経験です。

差押えの線をどこに引くか

納税のご相談では、資金繰りに苦しむ経営者の方と一緒に、納税の計画を立てました。処分をする場合も、財務諸表や、その業界のお金の動き方から資産を分析します。

どこまで差し押さえるかは、事業を止めない線をどこに引くかという判断です。事業が続かなくなれば、結局は納めていただくこともできません。

このとき身についたのは、数字を読む技術というより、数字の裏で事業がどう回っているかを想像する癖でした。

税務・不動産・相続は、一つの案件の中で絡み合う

用地補償の係では、公共用地の買収に伴う補償金を算定しました。算定には国税の財産評価基準を用います。税と不動産の評価は地続きです。

土地の境界を確定するには、古い登記簿や字絵図といった資料まで遡ることもあります。所有者が亡くなっていれば、相続の関係を整理しなければ話が前に進みません。徴税や課税でも同じで、相続関係を整理したうえでなければ処分ができない場面があります。

税務・不動産・相続は、別々の知識ではありません。一つの案件の中で、同時に、絡み合って必要になります。

「経営者の課題は分野で分かれていない」——私がそれを最初に知ったのは、行政の現場でした。

争いの多くは、最初の設計で防げた

市役所を出てからは、士業事務所の実務に携わってきました。

弁護士法人では、企業法務事業部でパラリーガルを務めました。建物の明渡しや立退きといった不動産の紛争を、訴訟と交渉の両面から扱う部署です。そこで見たのは、争いになった案件の多くが、最初の設計の段階で防げたはずのものだったということです。

契約の一文、定款の目的、雇い方の決め方。決めた時点では小さな違いが、後から取り返しのつかない差になる。

企業法務の現場を、紛争の側から見た経験です。当事務所がいま会社設立や契約、許認可を扱うときにも、この視点はそのまま効いています。入口に立ち会う仕事に意味があると考えるのは、ここからです。

同じ財務諸表を、反対側から読む

その後は弁護士法人・税理士法人・社会保険労務士事務所で事務局長を務めながら、パラリーガルの実務も続けました。会社設立の定款づくり、株主総会の議事録、就業規則、相続税の申告、記帳代行、社会保険の手続き。法務・税務・労務のどれもが、同じ一つの会社の中で同時に動いていることを、毎日見ていたことになります。

ここでは、市役所で読んでいたのと同じ財務諸表を、反対側から見ることになりました。どうすれば事業が伸びるか、手元の資金をどう確保するか。

経営・税務・財務は、見る方向が違うだけで、同じものだと思っています。

事務局長として関わった事務所は、いずれも立ち上げからでした

もう一つ、書いておきたいことがあります。事務局長として関わった事務所は、いずれも新規開業でした。看板を掲げる前から、事務所の中を作る側にいたことになります。

売上が立つ前から家賃と人件費は出ていきます。運営のルールは何もないので、書類の保管方法から経費の精算まで、一つずつ決めていく。人を採用し、育て、辞められないようにする。士業の資格者は、本来の専門の仕事に集中したいものです。だからこそ、それ以外のすべてを引き受ける人間が要ります。

いちばん難しかったのは、現場のスタッフと経営者の間に立つことでした。専門家として正しい判断と、事務所を続けるための判断は、いつも一致するとは限りません。どちらの言い分にも理があるとき、どこで折り合いをつけるか——正解のない調整を、何度も重ねました。

経営者になって、はじめて分かったこと

その間に、不動産会社の代表取締役も務めました。自分ひとりで興した会社ではなく、当時在籍していた弁護士法人の関連会社として立ち上げ、その経営を任された形です。

とはいえ、会社を立ち上げる段取りと判断は、ほぼこちらに回ってきます。資本金の払込み、事務所を借りる、口座を開く、最初の物件を仕入れる。決めることは次から次に出てきますが、判断の材料はいつも足りません。そして売上が立つ前から、経費は出ていきます。家賃も、外注費も、支払いの期日は待ってくれません。

そしてリース契約をはじめ各種の契約では、代表者である私が個人で保証を差し入れていました。会社が行き詰まれば、返ってくるのは自分のところです。資金繰りの怖さや、決断を先延ばしにできない苦しさは、当事者にならないと分からないものだと感じています。起業と経営は違うとよく言われますが、私にとっては「作る」ことより「続ける」ことのほうが、はるかに難しいものでした。

そして、制度の説明を受ける側に立ってみて分かったことがあります。専門家の話が正しくても、それだけでは動けないことがある。正しさと、決められることは別なのです。

三つの位置から見えたもの

振り返ると、同じ制度を三つの位置から見てきたことになります。

  • つくる側——条例の改正に携わりました
  • 運用し、審査する側——申請を受け、可否を判断する窓口にいました
  • 使う側——自分で会社を経営し、許認可を受ける立場にも立ちました

お金についても同じで、納めていただく側にいたあと、稼ぐ側に回りました。

立場が変われば、同じ制度がまったく違って見えます。その違いが分かることが、いまの仕事でいちばん役に立っています。

だから、行政書士なのです

ここで、最初の問いに戻ります。なぜ行政書士なのか。

争いになれば弁護士がいます。決算を締めるときは税理士がいます。人を雇えば社会保険労務士がいます。どの場面にも、力になる専門家がいる。けれども、まだ何も決まっていない段階——会社をつくるかどうか、許可が要るのかどうかを考えている段階に、誰が立ち会うのか。私が見てきたかぎり、そこがいちばん手薄でした。そしてそこで決めたことが、その後のすべてに影響してくるのです。

行政書士は、その入口に立ち会える資格です。会社をつくる、許可を取る、契約の形を決める。官公署に出す書類を通じて、事業のはじまりそのものに関わります。

しかも、行政の窓口が何を見ているかを内側から知っていることは、この位置でこそ役に立ちます。税を取る側にいたことも、紛争を後始末の側から見たことも、自分で会社を回したことも、すべて入口の判断に使えます。冒頭に書いた「交通整理」は、ここに立っているからできることです。

自分が持っているものが、いちばん活きる場所でした。だから、行政書士なのです。

ですから当事務所は、まだ何も決まっていない段階のご相談を歓迎します。書類を作る段階になってからでは、選べる選択肢がもう限られてしまっていることが多いからです。「こんなことを聞いてよいのだろうか」という内容こそ、お聞かせいただきたいと思っています。

まだ何も決まっていない段階から、ご相談ください

会社をつくるべきか、許可が要るのか、いつ動くべきか——決める前の整理こそ、いちばん効きます。東京・千代田区のVille行政書士事務所では、法人設立・各種許認可を中心に、事業のはじまりとその後に伴走しています。登記や税務、労務など行政書士が扱えない手続は、合同事務所の弁護士および提携の税理士・社会保険労務士と連携し、窓口をひとつにしたまま進めます。

初回相談無料・オンライン対応可

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この記事を書いた人

村上 聡(Ville行政書士事務所 代表)

特定行政書士・宅地建物取引士。市役所勤務、弁護士法人・税理士法人の事務局長、不動産会社代表取締役等を経て開業。創業支援を軸に、法人設立・建設業許可・宅地建物取引業免許・古物商許可・運送事業など、中小・小規模事業者の許認可と経営サポートを手がける。

【免責事項】本記事は2026年8月時点の当事務所代表の経歴と考え方を述べたものです。制度の具体的な取扱いについては、各コラムおよび取扱業務のページをご覧ください。

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