決済代行会社の破綻で売上が入金されない? 店舗経営者の「初動」と「公的支援」【全東信破産】

店舗経営公的支援

2026年7月6日、クレジットカード決済代行会社の株式会社全東信が大阪地方裁判所から破産手続開始決定を受け、決済代行サービスは即日中止されました。カード決済分の売上が入金されないおそれのある店舗が多数生じ、飲食業界の団体が緊急の注意喚起を出し、7月10日には経済産業省が資金繰り支援策を公表する事態になっています。
この事案が店舗経営者に突きつけたのは、「カード売上は、入金されるまでは現金ではない」という単純な事実です。
本コラムでは、未入金に直面した店舗が今すぐやるべき「資料整理」と、使える可能性のある公的支援——特にセーフティネット保証1号の認定申請——への備えを、行政手続と書類の専門家である行政書士の目線で解説します。

何が起きたのか——決済代行会社の破産とサービス即日停止

カード会社各社の公表によると、株式会社全東信は2026年7月6日付で大阪地方裁判所から破産手続開始決定を受け、同社によるクレジットカード決済代行サービスは即日中止されました。負債総額は約1,259億円(2025年3月期決算時点)と報じられています。

決済代行会社とは、カード会社と店舗の間に立ち、複数のカードブランドとの契約や売上金の精算をまとめて代行する事業者です。店舗側から見ると、お客様がカードで支払った代金はいったん決済代行会社に集まり、契約で決められた締め日・支払日に店舗の口座へ振り込まれます。つまり、サービスが止まった時点で「精算待ち」だった売上代金は、破産した会社に対する債権として宙に浮くことになります。

本記事は2026年7月10日時点の公表情報に基づいています。破産手続の進行や公的支援の指定状況は今後変わる可能性がありますので、最新情報は必ず関係機関の公表でご確認ください。

カード売上は入金されるまで「現金」ではない

飲食店や小売店は昔から「現金商売」と言われてきましたが、キャッシュレス化が進んだ今、その実態は変わっています。カード決済・QRコード決済の売上は、決済事業者から入金されるまでの間、法的には売掛金と同じ「回収前の債権」です。

「取引先の倒産に備える」と聞いて思い浮かぶのは、卸先や元請けの倒産でしょう。しかし今回の事案が示したのは、決済代行会社もまた、売上代金を常時預けている重要な取引先の一つだという視点です。仮に入金サイクルが月1回なら、店舗は常に最大1か月分のカード売上を決済代行会社に預けている計算になります。日銭が入る商売に見えて、実はまとまった額の債権を抱え続けている——この構造は、平時にはまず意識されません。

初動——未入金額を「証明できる」状態にする

未入金に直面した店舗が最初にやるべきことは、金額をただ「数える」ことではありません。後から第三者に説明し、証明できる形で資料を残すことです。

なぜ「証明」にこだわるのか。この後に控える手続——公的支援の認定申請、金融機関への融資相談、弁護士に依頼する場合の破産手続への債権届出——のすべてで、「いくらの売上が未入金なのか」を裏付ける資料の提出や提示を求められるからです。実際、一般社団法人日本飲食団体連合会(食団連)も、未入金額を証明する資料(カード売上明細、入金履歴等)の整理・保管を呼びかけています。

私が創業支援や資金調達のご相談で資料を整えるときの経験からも、行政や金融機関の窓口で最後にものを言うのは「主張」ではなく「突き合わせのできる書類」です。整理しておきたいのは次の資料です。

  • 決済端末・管理画面の売上明細(日次・月次)
  • 入金口座の通帳・取引明細(最終入金日がいつかを特定する
  • 加盟店契約書・決済代行サービスの利用契約書
  • 売上台帳・POSレジのデータ
  • 精算に関する通知メールや管理画面の表示(管理画面は今後閲覧できなくなるおそれがあるため、早めにスクリーンショットで保存

そのうえで、契約上の締め日と支払サイクルから「どこまでの売上が精算済みか」を確認し、未精算分のカード売上を日別に集計した一覧表を作っておきます。「売上明細」「一覧表」「通帳」の3点が互いに突き合わせられる状態になっていれば、どの窓口でも説明がスムーズです。

なお、当面の営業を続けるための応急対応も並行して必要です。食団連は第1報で、①端末による決済の即時停止(スタッフへの周知)、②未入金売上の集計、③代替決済手段の手配、の3点を呼びかけています。

使える可能性のある公的支援——セーフティネット保証1号を中心に

セーフティネット保証1号とは

取引先の大型倒産によって売掛金債権等が回収困難になった中小企業者を連鎖倒産から守る制度が、セーフティネット保証1号(連鎖倒産防止)です(根拠:中小企業信用保険法第2条第5項第1号)。

経済産業大臣の告示により倒産した事業者が「指定」されると、その事業者に対して50万円以上の売掛金債権等を有する中小企業者(50万円未満でも、その事業者との取引依存度が20%以上の場合を含む)は、市区町村の認定を受けたうえで、信用保証協会の通常の保証枠とは別枠の保証(100%保証)を利用した融資を申し込めるようになります。

適用に向けた手続が始まっています(7月10日時点)

経済産業省は2026年7月10日、全東信の破産手続開始により影響を受ける中小企業・小規模事業者への支援策を公表しました。セーフティネット保証1号については、「適用に向けた手続を開始しており、今後、官報にて告示する予定」とされ、告示に先立って信用保証協会での事前相談が始まっています

正式に1号保証を利用できるのは官報での告示(指定)後ですが、「使えるかどうか分からない」段階から「適用に向けて手続が進んでいる」段階へ進んだことになります。だからこそ、告示後すみやかに認定申請へ動けるよう、前章の資料整理を先に済ませておく——これが今できる最も有効な準備です。認定申請では、未入金額(売掛金債権等の額)を示す資料が必要になるからです。あわせて、取引のある金融機関や信用保証協会の事前相談を活用することもお勧めします。

認定申請の流れ(千代田区の例)

1号の認定申請は、本店所在地(個人事業主の方は主たる事業所所在地)の市区町村に対して行います。認定書の交付を受けたら、それを金融機関または信用保証協会に持参して保証付き融資を申し込む、という二段階の流れです。

たとえば当事務所のある千代田区では、窓口は商工観光課(千代田会館8階)で、来所(予約制)の場合は書類に不備がなければ即日交付、郵送の場合は5日程度で発行されます。様式や必要書類は自治体ごとに異なるため、申請前に本店所在地の市区町村のホームページまたは窓口でご確認ください。

そのほかの支援策

前記の経済産業省の発表では、1号保証のほかに次の支援策が示されています。

  • 特別相談窓口の設置:全国の日本政策金融公庫・沖縄振興開発金融公庫・商工組合中央金庫・信用保証協会に設置
  • セーフティネット貸付の要件緩和:日本政策金融公庫等のセーフティネット貸付(経営環境変化対応資金)の支援対象を、今回の破産手続開始により今後の影響が懸念される中小企業・小規模事業者にまで拡大
  • 既往債務の返済条件緩和等:返済猶予等の条件変更、貸出手続の迅速化、担保徴求の弾力化について、事業者の実情に応じて対応するよう政府系金融機関・信用保証協会に要請

また、食団連の第2報では、経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)加入者向けの一時貸付金(利率0.9%)も案内されています。回収不能となった売上の税務処理(貸倒れ)については、顧問税理士にご相談ください。

いずれの制度も「必ず使えます」と言えるものではなく、要件と審査があります。未入金額や取引実態を示す資料を整えたうえで、市区町村・金融機関・専門家に早めに相談するのが確実な進め方です。

専門家の使い分け——行政書士ができること・弁護士等に相談すべきこと

今回のような事案では、専門家ごとの守備範囲を知っておくと動きやすくなります。

行政書士がお手伝いできるのは「書類」と「行政手続」の部分です。具体的には、未入金額を証明する資料の整理や一覧表などの事実証明に関する書類の作成、セーフティネット保証の認定申請をはじめとする行政手続の書類作成・申請サポート、決済代行契約・加盟店契約の内容確認といった支援が該当します。

一方、破産手続への債権届出、回収可能性の法的判断、相手方との紛争対応は弁護士の領域です。貸倒処理などの税務は税理士の領域です。当事務所でも、ご相談内容に応じて弁護士・税理士と連携して対応しています。

まとめ——「決済代行会社も取引先」という視点を平時から

最後に、今回の事案から店舗経営者の方に持ち帰っていただきたいことを3点にまとめます。

  1. 応急対応:端末の停止・スタッフ周知・代替決済手段の確保
  2. 証明資料化:最終入金日を特定し、未入金額を資料で裏付けられる状態にする
  3. 公的支援への備え:セーフティネット保証1号は適用に向けた手続が進行中(官報告示の予定)。信用保証協会の事前相談を活用しつつ、認定申請を想定して資料を整えておく

そして平時の備えとして、決済代行会社も「売上代金を預けている取引先」と捉え、入金サイクルの把握、契約書の保管、毎月の入金消込を習慣にすることをお勧めします。これから開業する方が決済サービスを選ぶ際は、手数料率だけでなく、入金サイクル(=常時預けることになる金額)も比較の軸に加えてください。

開業準備中の方は、あわせてコラム「その事業、許可は要る? 起業前に押さえる許認可の見極めガイド【2026年度版】」もご覧ください。

未入金の資料整理・公的支援の申請準備、サポートします

「未入金額をどう整理して示せばよいかわからない」「認定申請の準備を手伝ってほしい」「決済代行の契約内容を確認したい」——東京・千代田区のVille行政書士事務所では、店舗経営者の皆さまの資料整理から行政手続まで、書類の専門家としてサポートします。破産手続への債権届出など法的対応が必要な場合は、提携の専門家と連携して対応します。

初回相談無料・オンライン対応可

この記事を書いた人

村上 聡(Ville行政書士事務所 代表)

特定行政書士・宅地建物取引士。市役所勤務、法律事務所事務局長、不動産会社代表取締役等を経て開業。創業支援を軸に、法人設立・建設業許可・宅地建物取引業免許・古物商許可・運送事業など、中小・小規模事業者の許認可と経営サポートを手がける。

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